Column > きくこのコラム

×月×日 職人の出番です

 最近、玄関マットを新調した。

 こういう「物」に関しては、夫は鼻が利く。私は夫の匂いには敏感だが、「物」については彼の後塵を拝す。彼は、うちにぴったりなもの、ほんの少し暮らしをグレードアップさせてくれるものなどを見つけてくるのが実にうまいのだ。

 玄関マットは、奈良のとある雑貨店で購入した。麻素材で、中央に犬のシルエットの模様がある。タグを見ると、若いデザイナーが図案を描き、それを地元の職人さんが製造するという、両者のタッグによって生まれた商品らしい。こういうのを現代の民芸品というのかも。民芸品というと、総じて古色蒼然としているけども(これは若輩者の言い分ですな)、これはとっても素敵。

 職人の手作りの品は、その伝統の重みが物の存在感に繋がっていて、使い手が地に足のついたしっかりした生活をしていないと、あんたのところにゃ不相応でっせと逆につっかえされそうなところがある。現代の生活はプラスチック製の軽々しいものが多いから、そういう意味でも敬遠されることが多いだろう。値段も張るし、買い手を選ぶのだ。とは言っても、売れなくなり技が継承されなくなると、元も子もないわけだから、職人気質はそのままに、この玄関マットのような新しい商品が登場してくるわけなのだろう。伝統の重みはある、技もある、しかし軽やかな商品。これからはコレですな。


<< 前へ         次へ >>