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×月×日 暮らし方いろいろ

 暮らしについての本が好きである。それには、生活を楽しく、潤いのあるものにするにはどうすればよいかというようなことが書かれてあるのだが、つまりは、私はそういう「豊かな」暮らしへの劣等感みたいなものがあるので、ついつい手にとってしまうようである。

 これらの本から得た知識から思うに、「豊かな」暮らしの入り口は、例えば物の整理整頓、散歩でのリフレッシュ、お風呂タイムの充実など、まぁごくごく些細なところにある。ただし、そこには必ず「丁寧に」「気持ちを込めて」行う旨が書かれてあって、どうやら、それこそが私のもっとも苦手とするところである。自分は、これぞと思ったことには没頭できるのだが、そうするとそれ以外は上の空になるので、後はめちゃくちゃ(実は家族も混乱しているよう)になる。そしてこれぞと思えることがない時は、気分が沈み、暮らしの質を上げるどころの騒ぎではなくなる。そのくせ、身の回りが整っていなければ、それはそれでイライラする。

 そんなこんなで、しごく単純な仕事の連鎖である日々を、美しく気持ちよく送っている人々を見るにつけ、その極意を伝授していただきたいという感にとらわれるのである。そして、また今日も新たな暮らし本に手を伸ばし、ため息をつくという有様なのであった。


×月×日 暮らし方いろいろ2

 私と違って、暮らし上手なのがうちの夫である。二人で風花座を主宰するくらいなのだから、我々は多分とても似ていて、仲がよい。ただし、暮らし方の上手下手でいえば、夫の圧勝である。彼は、本能的にか経験的にからか、暮らしを充実させるために不可欠なものが何なのかを的確に知っている。そして、日々家族の幸せのために邁進しているように思う。

 誤解を恐れずにいえば、彼は自分にこだわりがないのだろうと思う。ここでいう自分というのは、何が何でもこうでなければないという自意識のこと。私のような芸術系は、どうしても自意識が肥大して、何が何でもこの表現を追求するっ!みたいなところがあるけれども、それでは視野が狭くなりがちだし、ホームランか三振かというリスキーな試みでもある。彼は絶対にそれをしない。家族が一番だと思っているし、その愛する家族がずっと穏やかに幸せに暮らしていくための道を、一生懸命作ってくれている。家の隅々まで目が行き届き、私と娘が心静かに日々を過ごせるのは、彼がいてくれるからなのである。パパ、ありがとう。


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